在宅否認事件の検察官調べ。
被疑者は70代男性、事件後の脳梗塞により構音障害がある。
言葉が出づらいほか、体力、気力、記憶の衰えがある中、取調べにどのように臨むべきなのか。立会権が法定されていれば悩む必要も無いのにと思いながら考える。
取調室に入ることを拒否する選択肢を睨みつつ交渉し、結果、
・録音録画(検察の提案)
・弁護人に代えて配偶者が同席(弁護側の提案)
・20分ごとに休憩(弁護側の提案)
ということになった。
本人の供述能力が衰えている場合、録音録画は基本的に不利益に働く(真意から不十分にしか供述できない)と考えるべきであり、葛藤は大きい。しかし配偶者が足らざるを補えるなら、取調室に入ることを拒否することの弊害(難癖を付けての逮捕状請求)を考えたとき、ギリギリの妥協点と判断せざるを得なかった。休憩の開始と終わりの都度、取調室まで送り迎えし、中で待機する検察官に一声かけるところまで録画させ、引き上げるのだが・・立会権が法定されない限り、毎度毎度、このような鬩ぎ合いが続くことには、うんざりする。
なお、このような鬩ぎ合いがあることや、依頼者の体調への気配りが必要な案件では、やはり検察庁に足を運ぶことが肝要である。
今回も、傍から見て「やせ我慢」と思しき依頼者を、20分×3コマで連れて帰ることにになったが、同行して初めてなせる技である。
(弁護士 金岡)