岡崎支部の事案である。
保釈請求の翌日(1日後)、請求書が裁判所に届く。
当然、その日中に検察官が意見を提出し、弁護人がこれを確認して所要の補充を行い、その日中に判断が出る。これが望ましい在り方である。

ところが、岡崎支部の井上検察官は「立て込んでいるから意見書は翌日(2日後)になる」という。
確かに、そういうことはあるだろうが、そうなると弁護人による検察官意見の確認が遅れるので、裁判所の判断が更に翌日(3日後)に回りかねない。
1日後の判断と3日後の判断、2日の差がある。2日間も無用に勾留が続くことを正当化する術はないだろう。

そこで検察官に対し、「自分の都合で意見が翌日になるなら、せめて意見を弁護人にも直送して、弁護人が遅滞なく内容を確認して所要の補充が出来るようにしたらどうか」と促すも、拒絶された。
曰く、「前例がない」「やってない」「原則としてやらない」のだそうだ。
例えば検察官が、期日直前に追加書証を開示してくる場合がある。この場合に「開示するので謄写して下さい」で期日を空転させるのがまずいということを理解する程度の頭はあるのだろう、ファクスで送りつけられることが、ままある。であれば、裁判書類のファクスが出来ないはずはない。自分の都合ではファクスを使う、しかし、被告人のためには使わない、浅はかな了見である。再考を促すも、2時間くらい、再度、検討して、やはりどうしてもファクスは出来ないのだそうだ。

検察官の都合で、最悪、2日も保釈の判断が遅れることは責任問題ではないのかと食い下がると、「こっちにも予定がある」と開き直ったり、「申し訳ない」を連発したりと、忙しい。
申し訳ないも何も、意見書をファクスすれば最悪の事態は免れるというのに、と呆れるほかないのであるが、役所で、上から目線で人を捕まえる仕事をしていると、かくも、出られるものなら一日でも早くという切実な思いに鈍感になるのだろう。
本欄では時々、この話題を持ち出すが、裁判所も検察庁も、自分の都合ではファクスで送りつけてくる癖に、こちらの要望に対しては頑なに拒否する傾向の顕著さは、十数年、殆ど変化しない。鈍感なお役所仕事を少しでも改善するには、法曹一元などの荒療治も必要だろうとつくづく思う。

(弁護士 金岡)