各地単位会、更には支部毎に、記録謄写の有り様は様々であり、料金体系もまた様々である。単位会所属会員とそれ以外の弁護士とで扱いを分けている地域もあり、例えば某単位会では所属会員の場合1枚あたり60円だが、それ以外の弁護士の場合は80円になるが、この程度の区別、単価であれば、まあ仕方がないと思える。
ところで北陸地方の某単位会Kでは、上記のような料金格差のみならず、基本料金を設定している。所属会員の場合、49枚まで定額3300円で、これを超えると1枚あたり66円が加算され、それ以外の弁護士の場合、37枚まで定額3300円で、これを超えると1枚あたり88円が加算される(これは白黒の場合で、カラーとなると更にお高い)。
この結果、先だっては6枚の謄写に3300円を請求され、今度は2枚の謄写で3300円を請求されるという結果になった。
請求書の発行主体(つまり弁護士会の謄写係)が所属する弁護士会から検察庁までは、どうやら徒歩1分(道路を挟んでお向かい)。
幾ら何でも暴利ではないだろうか。
記録の謄写は裁判の生命線であり、民事刑事を問わず、絶対に必要である。
たったの1枚でも3300円を請求して、言葉は悪いが儲けを得る姿勢は、司法を担う機関として了見違いではないだろうか(カルテ1枚の謄写に診断書料を要求するような悪質な医療機関と、どっこいどっこいである)。
心当たりの向きは、是非、改善して頂きたいと思うし、日弁連も、生命線である謄写を不当に困難にしないよう、天井の目安を設定するべきではないだろうか。
それにしても、この単位会の国選弁護士は、果たして真面目に、自腹を切って記録を謄写しているのだろうか(契約約款31条によれば、通常事件は200枚まで謄写費用は完全に自腹となるが、例えば期日調書2頁を謄写したい!と思ったら3300円、これが3期日、続いたら1万円もの自腹であるが、よくぞ我慢するものだ)。それとも余程のことがない限り謄写しない文化が定着しているのだろうか。余所事ながら心配になる。
(弁護士 金岡)
【2020年10月16日 追記】
上記に対して、要旨「自分の地域では弁護士が自分で(若しくは事務職員で)謄写する文化がある」「謄写していないのではないかという勘繰りは不遜だ」という趣旨の指摘があった。
なるほど言われてみれば、最高裁にはコインベンダー式のコピー機があった。名古屋地検の閲覧室にもコピー機はあったが・・あれは認識に間違いが無ければ謄写業者用で弁護人が使う仕様ではなかったような・・ともあれ、自分で(閲覧接写なり)謄写する文化が定着している地域があるなら、その点では言い過ぎになるので、お詫びしなければならない。
とはいえ、そうなると気になるのは、裁判所の記録についても、(閲覧接写なり)自分で謄写する文化があるのか?という点である。各地裁判所の書記官室に出入りした経験はさほど無いが、個々の弁護士が、裁判所から記録原本を借りて書記官室付近のコピー機で自ら謄写作業をするとか、カメラをカシャカシャやるという図は、どうしても思い描けないのだが・・。数枚の期日調書を確認するために何千円、というのは、(謄写業者の組織体制次第では相当価格だと言われようとなんだろうと)謄写を抑制してしまうものだと思う。
勿論、日弁連が元来主張しているように、検察官は弁護人に(閲覧謄写機会を与えるだけではなく)複製の交付を行う義務を課すべきであるし(刑訴法の原則部分の不公正さは未だに是正されない。整理手続はちょっと違うのだが。)、裁判所も、裁判利用者の訴訟記録の写しの入手について無償を保障する(・・内部的には料金を発生させるとして、それを訴訟費用負担の問題に解消させれば、とりあえず国選事件は事実上無償化出来る筈だ)のが本来だと思う。