本欄本年10月13日付け「忙しさにかまけて保釈審理を妨げる検察官」の後日談である。結論から言えば、相変わらずの持論であるが、身体拘束に係る裁判の各種書面を迅速に遣り取りできる改革が必要である。

元々は、請求翌日の請求書送達日に検察官が意見書を出さず、しかも1日遅れの意見書のファクスを拒んだところから始まった。あわよくば請求書送達日に判断まで進めようところ、検察官の提出が遅れ、ファクスも拒んだため、(地元の弁護士に「使者」として検察官意見の閲覧接写を御願いできるという僥倖に恵まれたにも関わらず)弁護人の補充書面が夕方にかかり、裁判所の判断は更に翌日に回された(意見書のファクスが得られていれば、午前中に補充を出し、その日中の判断が得られていたと胸算用している)。
理想より2日遅れである。

2日遅れの許可決定に対し、検察官は準抗告を申し立ててきた。
原決定の通知から実に3時間38分も経過していた。準抗告など、せいぜい1~2時間の間に行われるものだから、てっきり、準抗告は諦めたと錯覚していた。

それはさておき、準抗告審裁判所に、必要に応じて意見書を出すので検察官の申立書のファクスを求めるも、「判断にあたり、先生から意見書を出して頂く必要はない。なので申立書のファクシミリも必要ないと思います。」とのこと。
確かに、事後審は、反論機会を与えるまでも無いと判断した場合は反論を提出させることなく判断に進むことも多く、民事刑事を問わず見られる現象である。とはいえ、「までもない」という言葉に甘えて100%、安全かというと、不安は残るところである(そのような信頼感を裁判所に抱くようでは、実務家失格だろう)。
やはり、念のために反論したいと言うこともあるし、当事者であるのに蚊帳の外に置かれたまま不安な状態に置かれること自体に、問題がある。判断権者の裁判所にはそこが分からないのかも知れないが(参考までに、求められてもいないのに提出した意見書の冒頭部分を末尾に貼り付けておこう)。

本題に戻ると、こういった悩みが尽きないのは、「ぱぱっとファクスで送ってしまう」という方法論を否定しているからだろう。ぱぱっと送る方法があるなら、うだうだと「までもないかどうか」を考える間に、送ってしまえるし、それに対し文句は出まい。
幸い、準抗告審裁判所は、3時間程度で準抗告を棄却してくれたので結果的に事なきを得ているが、前記の通り100パーセントの安全が保障されない以上、それは結果論であって最善手ではないだろう。

聞くならく、令状取得に電子的な手続きを導入し、簡易迅速を志向する検討が進められているという。まさか、またもや、捕まえる方には熱心で、釈放する方には不熱心、ということが繰り返されるのだろうか。
令状取得が電子的に遣り取りできるなら、釈放の方も、同じようにして貰わなければならない。

(参考)

弁護人は、検察官の準抗告理由を把握していない。
ファクス送付や、使者による閲覧の方法による工夫も奏功せず、準抗告理由を把握出来ないままに「判断待ち」となることは、手続保障に照らすと相当とは思われず、今後の改善が必要である(なお、事後審裁判所が、敢えて反論を求めるに及ばないとの訴訟指揮をすることがあり、その場合は通常、原審の判断が追認されることは承知しているし、否定するものでもないが、やはり不安定な状態に置かれているという事実は裁判所にも理解して頂きたい)。

(弁護士 金岡)

【2020年10月16日 追記】

木曜夜の許可決定だったので、保釈条件通知が金曜中に届くか不安になり確認を入れたところ、案の定、金曜発送だと言われた。
「本人に保釈条件の説明が出来ないまま週を越すのは困る」「許可決定書だけでもファクスして欲しい」と要請するも、にべもなく拒否。
結局、書記官が口頭で読み上げることになったのだが・・なんと馬鹿馬鹿しい。IT法廷などと喧伝する一方で、正しさの保障もない読み上げとは。
なお、ちょいと意見を求められた事案で、本人が保釈条件を知る前に保釈条件違反を冒してしまったことで取消騒動に発展した事例があるが(検察官は準抗告までして粘ったが保釈は取り消されず)、そういう事例を知るにつけても、釈放指揮がされる前に保釈条件を確実に確認できる方法が用意されて然るべきだと思った。